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福岡高等裁判所 平成7年(ネ)972号 判決

平成七年(ネ)第八六九号控訴人・同第九七二号被控訴人(一審被告)

有限会社ニート産業

右代表者代表取締役

古瀬光子

平成七年(ネ)第八六九号控訴人・同第九七二号被控訴人(一審被告)

古瀬好男

右両名訴訟代理人弁護士

永井均

平成七年(ネ)第八六九号被控訴人・同第九七二号控訴人(一審原告)

株式会社エルゼ

右代表者代表取締役

平田好正

右訴訟代理人弁護士

辻正喜

(以下、平成七年(ネ)第八六九号控訴人・同第九七二号被控訴人(一審被告)有限会社ニート産業を「一審被告会社」と、平成七年(ネ)第八六九号控訴人・同第九七二号被控訴人(一審被告)古瀬好男を「一審被告古瀬」と、平成七年(ネ)第八六九号被控訴人・同第九七二号控訴人(一審原告)株式会社エルゼを「一審原告」とそれぞれ表示する。)

主文

一  一審被告らの控訴に基づき、原判決中一審被告ら敗訴部分を取り消す。

二  一審原告の一審被告らに対する請求をいずれも棄却する。

三  一審原告の控訴を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審とも、一審原告の負担とする。

事実及び理由

第一  申立

控訴の趣旨

平成七年(ネ)第八六九号

主文と同旨

同第九七二号

1  原判決を次のとおり変更する。

2  一審被告会社は一審原告に対し、五一万〇五三一円及びこれに対する平成二年九月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  一審被告らは各自、一審原告に対し、二八六七万六七三一円及びこれに対する平成二年九月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、二審とも、一審被告らの負担とする。

第二  事案の概要

一  本件の概略

契約に基づき、一審原告から清掃用品の貸与を受け、これを顧客に賃貸(レンタル)する業務を営んでいた一審被告会社は、その営業用動産及び顧客名簿等を、一審原告と同業の他社の商品を取り扱う別の業者に一括譲渡した。

一審原告は、一審被告会社との右契約は実質的にはフランチャイズ契約であるとしたうえ、一審被告会社の右行為は、営業譲渡には一審原告の承諾を要するという右契約の条項に違反すると主張して、右契約を解除したうえ、一審被告会社に対し、契約の終了に基づき、商品の返還またはその執行不能の場合の右商品の価額に相当する損害金の支払(代償請求)並びに商品の未返還及び返還遅延による各損害賠償を請求するとともに、一審被告会社に対しては債務不履行または不法行為により、一審被告会社の代表者である一審被告古瀬に対しては有限会社法三〇条の三により、いわゆる「のれん」(顧客)の喪失による損害の賠償を請求した。一審被告らは、商品はすべて返還済みであると主張し、かつ、債務不履行ないし不法行為等による損害賠償義務及び損害額を争った。

原審は、一審原告の主張をおおむね認めて一審被告らに対する各請求のそれぞれ一部を認容し、残余を棄却したため、双方が控訴した。

なお、一審原告は、原判決が、一審被告会社に対する商品返還請求及び商品返還執行不能の場合の損害賠償請求の一部を棄却し、一審被告古瀬に対する商品返還執行不能の場合の損害賠償請求の全部を棄却した部分については、不服を申し立てず、かつ、当審において、一審被告会社に対する従前の商品返還請求及び商品返還執行不能の場合の損害賠償請求を、商品返還不能による確定額の損害の賠償請求に交換的に変更した(これにより、原判決主文第一、二項は失効した。)。

二  当事者双方の主張は、以下のとおり訂正するほかは、原判決事実摘示中の「第二 当事者の主張」の記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決五枚目裏一行目に「被告の営業権譲渡」とあるのを「一審被告会社の営業権譲渡」と改める。

2  同九枚目表二行目の「(1) 原告は」から同裏七行目までを、次のとおり改める。

「一審原告は、一審被告会社に対し、本件契約締結当時から平成二年三月ころまでに、清掃用モップ等の商品を賃貸したが、前項記載の本件契約の終了により、一審被告会社は手元にある商品を一審原告に返還すべき義務を負うに至ったところ、一審被告会社は、原判決別紙「最終受払残数、比較相違表」中の「②エルゼ残数」欄記載の商品を返還せず、現在ではその返還はもはや不能となった。これにより、一審原告は、当判決別紙「未回収商品の返還不能による損害額計算書」記載のとおり、合計五一万〇五三一円の損害を受けた。」

3  同一〇枚目表一行目の「基づき」から同七行目までを、次のとおり改める。

「に伴う商品の返還義務の履行不能による損害賠償として、五一万〇五三一円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成二年九月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

第三  証拠

原審及び当審記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四  判断

一  当裁判所は、一審原告の本訴請求はいずれも失当と判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正及び削除をするほかは、原判決の理由説示と同じであるから、これを引用する。

1  原判決一七枚目表末行から同二〇枚目表一一行目まで(一審被告会社の責任に関する説示部分)を、次のとおり改める。

「三 一審被告会社の債務不履行または不法行為について

1  まず、債務不履行責任から検討する。

(一) 前記二6で認定したとおり、一審被告会社とダイオーズとの間の取引は、一審被告会社において、清掃用品レンタルという営業の枢要部分である顧客(得意先)との取引関係を、その信用及び顧客と担当従業員との信頼関係を維持し、現に営業を継続している状態のままダイオーズに引き継ぐほか、営業用資産も譲渡し、これらに対する包括的な対価の支払を受けるというものであるから、実体としては営業譲渡に該当する。

右取引の趣旨目的について、一審被告らは、一審被告会社としては、本件契約に基づく代理店営業を廃止するにあたりダイオーズに顧客を紹介したにすぎないと主張する。しかし、右のとおり一審被告会社の行為は単なる顧客の紹介にとどまるものではないのであって、営業の終了は、営業の枢要部分をダイオーズに譲渡したことにより従来どおりの営業を継続することが不能となった結果であるから、一審被告会社の右一連の行為をとらえて営業廃止と呼称しても差し支えないが、このことは、前記の営業譲渡がなされたとの認定と相容れないものではない。

もっとも、一審被告会社は、一審原告との本件契約(なお、前記のとおり、本件契約が「代理店契約」として締結されたことは争いがない。しかし、代理店契約とは、専ら他の商人の営業の部類に属する取引の代理または媒介を業とする商人、すなわち商法四六条の規定する代理商が一方当事者となるものであり、この場合、末端の顧客と直接の取引関係に立つのは、代理商ではなく、本人である商人である。然るに、争いのない本件契約の内容において、一審原告は一審被告会社(契約上の地位承継前は一審被告古瀬)に清掃用品を提供し、一審被告会社はこれを顧客に賃貸すると定めており、これによれば、一審被告会社は、一審原告を代理して顧客との契約を締結するのではなく、一審被告会社が契約の一方の当事者となって顧客と取り引きすることが予定され、前認定の営業の実態もこれに沿うものであったことからしても、本件契約が法律的な意味における代理店契約に該当しないことは明らかである。)の当事者たる地位を譲受人であるダイオーズに引き継いでいない。この点からすると、一審被告会社の営業が、一審原告との本件契約に基づき、一審原告を唯一の仕入先とし、一審原告とのいわゆるフランチャイズ・システム(注)による取引関係の維持継続を前提として存立してきたものであることに照らすと、本件における営業譲渡については、従前からの仕入先との取引関係を含め、有形無形の構成要素からなる営業の全部または一部を一括して譲渡するという一般の場合の営業譲渡とは同一に論じられない面がある。

(注) ある商品販売、サービスの提供を目的とする事業の主宰者(フランチャイザー)が特定の独立事業者(フランチャイジー)に一定地域における独占的営業権を付与し、広告宣伝を行い、補助員等を派遣するなどして末端における営業活動を援助する代りに、商品等の代価のほかに手数料(ロイヤリティー)の支払を受ける、一種の事業拡大方策。条件がそろえば、フランチャイザーは自己の営業所を設置運営するコストと危険を避けつつ、広く末端顧客を獲得することができ、フランチャイジーは経験とノウハウの蓄積、準備がなくても事業を開始し、フランチャイザーが展開する宣伝広告により形成されたブランドイメージにより一定の営業成績を上げることができるという、双方にメリットがあることが期待されるシステム。

しかし、清掃用品のレンタル業務は、仕入先が一審原告でなければ成り立たないものではなく、また、ブランドイメージに依拠する度合いが比較的少ない業種ということができ、顧客との取引関係の成立と継続の要因は、商品の特性や個性もさることながら、これを提供する一審被告会社の顧客に対する信用力、ないしは、その担当従業員と顧客との信頼関係にあるという見方ができるのであり、営業主体や商品のブランドは変わっても、顧客との営業を担当する従業員が変わらなければ従来どおりに取引関係を継続する顧客もあるであろうことは十分考えられるから、これまでの営業がいわゆるフランチャイズ・システムによるものであったからといって、営業譲渡には、従前の唯一の仕入先との取引関係の移転が不可欠というものではない(なお、これを営業の譲渡と見るか顧客の譲渡と見るかは、ものごとの全体をとらえるかその一部に重点を置いて見るかの違いにすぎず、一審被告会社の行為が契約違反に該当するかどうかの結論に影響を及ぼすものでもない。)。

(二) 本件契約に、一審被告会社は、代理店営業を他に貸与、譲渡してもさしつかえないが、この場合は、一審原告の承諾を得るものとするという条項(以下「本件条項」という。)があることは争いがない。

一般に、独立した企業の企業主が企業から利益を得る方策としては、その営業活動の維持継続によって収益を上げることに限られるものではなく、営業の全部または一部を他に譲渡し、対価を取得するという方法もある。ところで、フランチャイズ・システムにおけるフランチャイジーは、フランチャイザーとは別個独立の企業主体であり、独自の立場で利益を追求し、経営判断を行うものであるから、当該企業にとって有利かどうかという判断に基づき、それまでのフランチャイズから同業他社のフランチャイズに鞍替えするという選択肢も当然あり得るところであり、逆に、フランチャイザーの方も、あるフランチレイジーに当該地域における独占的営業権を継続して認めることが自己に有利な結果を生まないと判断すれば、これを切り捨てて新たなフランチャイジーに営業権を与えるということもあるのであって、自由競争を根本原理とする経済社会においては、つまるところは企業としての最大利益の追求とこれに基づく経営判断が優先し、法令及び契約による制限以外にはこれを直接的に規制する根拠はないということができる。したがって、それぞれ独立した企業の相互依存的な取引関係であるフランチャイズ・システムにおけるフランチャイザーとフランチャイジーとの連携の緊密さの度合いや、システムからの離脱ないし放逐が容易であるか困難であるかは、事実上は、両者の経済的な力関係や依存の程度、利益の有無、大小という諸事情や各自の利害得失に関する衡量判断によって自ずから定まり、法的な側面においては、両者間の契約条項の定め方の如何にかかるものであるが、それぞれの企業としての独自の経営判断や利益追求は最大限に尊重されるべきであることを考慮すると、契約において明確に合意したと認められる事項に抵触することが明らかでない限り、各自の行為について相手方に対する契約上の責任を問われる余地はないと解するべきである。

そこで、本件契約における前記営業譲渡の制限を定めた本件条項は、フランチャイジーたる地位の移転を伴う場合にはフランチャイザーである一審原告の承諾を要するが、そうでない場合は承諾がなくても譲渡できるという趣旨であるのか(一審被告らの主張)、右地位の移転を伴わない営業譲渡についても一審原告の承諾がない限り禁止されるという趣旨を含むのか(一審原告の主張)が問題になるわけであるが、本件条項にいう「代理店営業」が本件契約に基づく一審被告会社の営業を指すことは疑いを入れないから、右条項は、一審被告会社が一審原告との契約関係に基づくフランチャイジーとしての営業を他に譲渡する場合には、一審原告の承諾を要するという趣旨であると解するほかない。これは、本件契約が前記のようなフランチャイズ・システムによるものであり、フランチャイザーである一審原告にとって誰がフランチャイジーとなるかは重大な関心事であり、これを選ぶ権利があることから、本件条項をもって、契約上の地位の移転につき特に一審原告の承諾が必要である旨を規定したものと理解することができ、何ら不自然な点はない。また、本件契約には、フランチャイジーとして一審原告から独占的営業権を付与された一審被告会社が右権利を放棄する場合につき、一審被告会社は「代理店営業をなす権限を喪失する」と定める条項があることは争いがなく、甲三号証によれば、右の独占的営業権の放棄すなわちフランチャイジーの意思のみによるフランチャイズ・システムからの一方的離脱を制約する条項は、何ら存しないことが認められるのであり、このことからしても、右システムからの離脱を営業譲渡とともになすことが禁止されているとは解しがたい。

してみれば、本件条項の反対解釈として、一審原告との契約関係に基づく契約当事者としての地位の移転を伴わない営業譲渡については、一審原告の承諾は必要ないと解することができ、または、少なくとも、本件条項は右の営業譲渡については何も規定しておらず、したがって、これに基づく債務不履行責任が生じる余地はないと解するほかない。

もとより、契約条項に形式的には違反していないとしても、契約関係上の信義誠実義務違反と評価すべき著しく悪質な背信的行為があれば、損害賠償請求が可能となることもないではないが、前認定の経過事実中には、一審被告会社の行為をもって右のような信義則違反に該当すると評価すべき事情はいまだ見出されず、他にこれを認めるに足りる証拠はない(以上の解釈は、一審被告会社が一審原告と競合関係に立つ同業他社のフランチャイズ・システムへ鞍替えしても何ら契約上の責任を負わないことを容認することになるが、これによって一審原告に不利益をきたすとしても、その原因は、一審原告が本件契約においてフランチャイズ・システムからの一方的離脱を明確に制裁をもって規制する条項を設けなかったことにあるというべきである。)。

(三) したがって、一審被告会社につき債務不履行の責任を問うことはできない。

2  すすんで不法行為責任を検討する。

一審原告は、フランチャイズ・システムのもとで獲得された得意先である被告会社の顧客は、いわゆる「のれん」を形成し、財産的価値を有するものとして、一審原告に帰属するから、一審被告会社による顧客の譲渡は、一審原告の右「のれん」を喪失させたものとして不法行為を構成すると主張する。

「のれん」とは、一般的には、長期間にわたる一定の店舗での営業の継続により、商人が獲得する得意先、仕入先との良好な関係、名声、信用、営業上の秘訣などの総体からなる無形の経済的利益をいうものであるところ、一審原告の右主張は、一審被告会社の顧客は、一審原告の財産権である「のれん」を形成する一要素としての得意先にほかならないから、これを喪失させる行為は一審原告の財産権に対する違法な侵害であるという趣旨と解される。

しかしながら、一審原告は、一審被告会社の顧客につき、何らかの直接の契約に基づく権利を有していたものではないから、一審被告会社が、一審原告のフランチャイジーとして獲得した顧客を第三者に譲渡し、ないしは、顧客との取引関係を第三者に引き継いだ行為は、一審原告の顧客に対する債権を侵害したことにならないことは明らかである。もとより、「得意先」とは、従前からの取引の実績に基づき、今後も良好な取引関係の継続が期待できる顧客をいい、必ずしも継続的取引契約を締結している相手方に限られるものではないから、一審原告と一審被告会社の顧客との間に直接の契約関係がなくても、一審原告において、一審被告会社の顧客が今後も一審原告の商品を愛用してくれるであろうと期待することができるという状況があれば、これを一審原告自身の「得意先」と見ることもできないではない。しかし、一審原告の右期待は、あくまでも一審被告会社と顧客との取引関係が維持継続されることを前提とする間接的なものであるにとどまり、かつ、前述のとおり、一審被告会社は、一審原告が主宰するフランチャイズ・システムにおけるフランチャイジーとして、一審原告と相互依存的な関係にあるものの、独立した一個の企業であり、一審原告との間の契約による制限に服するほかは、自身の責任と計算のもとに顧客との取引関係を開始し、維持し、処分する自由と権利を有するのであるから、一審被告会社と顧客との取引関係の維持継続によって一審原告が取得し得る利益は、一審被告会社との契約関係に基づいて支払われる対価に含まれるもののみである(一審原告が一審被告会社の顧客獲得等の営業活動を支援したことによるコストの回収も同様である。)と見るべきであり、したがって、一審被告会社の顧客に対する一審原告の右期待は、少なくとも一審被告会社との関係においては、事実上の反射的利益というほかなく、法的に保護されるべき利益には該当しないと解するのが相当である。

その他、一審被告会社の右行為が、独立した企業である一審被告会社に許される営業活動の範囲を超えて、一審原告の権利を違法に侵害した不法行為に該当すると認めるに足りる証拠はない。」

2  同二〇枚目表末行から同裏七行目まで(一審被告古瀬の責任に関する説示部分)を次のとおり改める。

「これまで認定したところから明らかなとおり、一審被告古瀬は、一審被告会社の代表取締役としての職務の遂行にあたり、一審原告との契約に抵触しない範囲で、一審被告会社にとって最も利益となる行為をしたにすぎないのであるから、これは一審被告会社に対する任務違背には該当せず、また、一審被告会社の代表取締役としてダイオーズへの前記営業譲渡を決定し実行したことをもって、一審原告に対する直接の違法な権利侵害行為とみることができないこともまた、前述したところから自ずと明らかである。

その他、一審被告古瀬が右営業譲渡に関して、一審原告に対し、有限会社法三〇条の三に基づく責任を負うことを認める根拠となるに足りる事実及び証拠はない。」

3  同二〇枚目裏九行目から同二二枚目表一行目まで(一審被告会社が債務不履行により一審原告に対して賠償すべき損害額についての説示部分)を削除する。

4  同二二枚目表一二行目から同裏五行目まで(未回収商品の返還請求について判断するにあたり、本件契約が一審被告会社の債務不履行により終了した旨を説示した部分)を、次のとおり改める。

「六 未回収商品の返還不能による損害賠償請求について

1  前認定のとおり、一審被告会社は、ダイオーズに営業を譲渡した後の平成二年三月一九日、一審原告に対し、代理店営業を廃止する旨の解約届を提出したものであり、これは、本件契約中の一審被告会社が営業権放棄をした場合を定めた前記条項に該当する行為とみることができ、したがって、これにより本件契約は終了したものと認められる。」

5 同二五枚目表一行目の「(ただし」から同四行目の「とする。)」までを削除し、同五行目の「負っている」を「負った」と改め、同五行目の後に次のとおり付加する。

「そして、一審被告会社は、右認定に反し、一審原告に返還すべき商品はすべて返還済みであると主張しており、一審被告会社の右態度に加え、右商品が消耗品であり、本件契約の終了から既に六年以上の年月が経過していることを考え合わせると、右認定の未返還商品の引渡は、社会通念上、もはや不能となったものと認められる。」

6 同二五枚目表六行目から同裏三行目までを削除し、同四行目行頭の「2」を「4」と、同行から四行目にかけて、同六行目から七行目にかけて及び同末行にある「商品返還債務の執行不能の場合の」という字句をいずれも「商品返還不能による」と、同七行目の「将来の」から同八行目の「時期である」までを「弁論の全趣旨によれば、遅くとも本件口頭弁論終結時までには、未返還商品のすべてにつきその返還が不能となったものと認められることからいって、本件」とそれぞれ改める。

7 同二六枚目表一〇行目の「別紙」から同裏二行目までを次のとおり改める。

「当判決別紙「未回収商品の返還不能による損害額計算書」中の「c商品新規製造単価」欄記載の各金額のとおりであり、したがって、商品返還不能により一審被告会社が一審原告に対して賠償すべき損害額は、右各金額にそれぞれ二分の一を乗じた金額であると認められるところ、一審原告は一審被告会社から同「b預かり保証金」欄記載の金額の預託を受けていることを自認しており、かつ、右認定の損害額合計額が右預かり保証金合計額を下回ることは計算上明らかであるから、結局、一審原告が一審被告会社に対して請求することができる損害は存在しないこととなる。」

8 同二六枚目裏三行目から同二七枚目表八行目までを削除する。

二  よって、一審原告の一審被告らに対する本件請求はいずれも失当であるから、一審被告らの控訴に基づき、原判決中一審被告ら敗訴部分を取り消したうえ、一審原告の本訴請求をいずれも棄却し、一審原告の控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 秋元隆男 裁判官 池谷泉 裁判官 川久保政德)

別表〈省略〉

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